導入前中退共

中退共は11か月で辞めると0円になる

退職金の制度を入れる時、中退共と企業型DCのどちらにするか。上限額・運用・早期退職の3つで分かれます。

机に向かって、手元に目を落としているところ

退職金の制度を入れようとすると、まず出てくるのが中小企業退職金共済(中退共)です。国の制度で、加入している会社は多くあります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)とどう違うのか。分かれるのは3つです。

この記事で分かること

  1. 掛金の上限は中退共30,000円、企業型DC62,000円。役員や管理職に厚く積みたい場合、中退共は頭打ちになる
  2. 国の助成があるのは中退共だけ。新規加入は掛金の半額(上限5,000円)を4か月目から1年間
  3. 短期で辞めた時のお金の行き先が違う。中退共は11か月以下だと0円で、掛金は会社にも本人にも戻らない
目次
  1. 並べるとこうなります
  2. 上限は2倍以上違う
  3. 国の助成があるのは中退共だけ
  4. 短期で辞めた時、お金がどこへ行くか
  5. 選ぶ前に決めることがあります
  6. よくある質問

並べるとこうなります

項目中退共企業型DC
掛金の上限 月30,000円 月62,000円
誰が出すか 全額を会社 会社と本人の両方
損金になるか 全額 全額
運用 本人は選べない 本人が商品を選ぶ
短期で辞めた時 11か月以下は0円 規約次第で会社に返還
受け取り 退職時に本人へ 原則60歳まで引き出せない
国の助成 あり なし

上限は2倍以上違う

中退共は月5,000円から30,000円の範囲で、従業員ごとに決めます。企業型DCは月3,000円から62,000円です。

この差が効いてくるのは、役員や管理職に厚く積みたい場合です。中退共は30,000円で頭打ちになります。

中退共の掛金月額は5,000円〜30,000円(短時間労働者は2,000円・3,000円・4,000円の特例あり)。出典:中小企業退職金共済事業本部。企業型DCの上限62,000円は2026年12月1日施行の改正後の額です。

国の助成があるのは中退共だけ

新しく中退共に入ると、掛金の半額(従業員ごとに上限5,000円)を、加入の4か月目から1年間、国が助成します。掛金を増やした時にも助成があります。

掛金月額18,000円以下の従業員を増額した場合、増額分の3分の1を1年間助成。出典:厚生労働省「中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成」

企業型DCにこの助成はありません。入り口のコストだけで見れば、中退共の方が軽く始められます。

短期で辞めた時、お金がどこへ行くか

ここが最も性格の違うところです。

総務・三浦

早く辞めた人の掛金は、会社に戻ってくるのでしょうか。

以西 裕介

制度によって違います。中退共は戻りません。掛金納付月数が11か月以下だと退職金は支給されず、その掛金は会社にも本人にも渡らず、制度全体の原資に入ります。

12か月から23か月だと、支給はされますが掛金の総額を下回ります。掛金と同じ額になるのは24か月からで、運用の利息が付くのは43か月目からです。

総務・三浦

企業型DCはどうなりますか。

以西 裕介

こちらは規約に定めを置けば、会社が拠出した分を返してもらえます。勤続3年未満で自己都合退職や懲戒解雇になった場合です。事業主返還といいます。

定めを置かなければ、1か月で辞めても全額が本人の資産として残ります。どちらにするかは、制度を作る時に会社が決めます。

中退共の支給区分は中小企業退職金共済事業本部の公表による。企業型DCの事業主返還は確定拠出年金法施行令第2条にもとづくもので、死亡・障害・制度の廃止・規約の変更・60歳到達による資格喪失は、3年未満でも本人の資産として残ります。

本人が辞めた後の手続きは「会社を辞めた時、企業型DCの資産はどうなるか」に書きました。

選ぶ前に決めることがあります

表を見比べて選ぶ話ではありません。相談をいただいた時、私はまず何の為に退職金を作るのかをうかがいます。

長く勤めた人に報いたい、途中で辞めた人の分は会社に残したい。そう考えるなら中退共の設計が合います。国の助成もあります。

一人ひとりが自分の資産として持ち、本人が運用の判断をする。求人票に金額を書きたい。そう考えるなら企業型DCです。

ただし、この金額は運用の結果で変わります。受け取る額が、拠出した額を下回ることもあります。積み立てた資産は、原則60歳まで引き出せません。

自社にどちらが合うかは「企業型DCを入れられる会社の条件は4つ」、費用は「企業型DCの費用は結局いくらか」にまとめています。

よくある質問

中退共に入っています。企業型DCに変えられますか。

中退共を解約して企業型DCへ資産を移す方法があります。

いまの中退共を続けたまま企業型DCを入れる形も取れます。

中退共では運用をしませんか。

本人が商品を選ぶ場面はありません。何を選ぶか考える手間がなく、増える幅は制度が決めています。

企業型DCで事業主返還を置くと、従業員に嫌がられませんか。

3年未満で辞めた場合だけの話なので、長く勤める前提の方には関係しません。

置くなら、説明会で最初から話します。「社員説明会で、制度の説明より先に話すこと」に、何を話すかを書きました。

この記事は2026年9月10日時点の法令・制度にもとづいて書いています。制度は改正されることがあります。実際の手続きの前に、最新の内容をご確認ください。

導入を考えている会社の方へ

企業型DCを入れるべきかどうか、費用はいくらか、自社で何人から始められるか。無料でご相談を承っています。

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ファイナンシャルプランナー 以西裕介

この記事を書いた人

以西 裕介いさい ゆうすけ

株式会社ソケットクリエイティブ 代表取締役/一般社団法人確定拠出年金推進協会 理事。
26歳で独立起業。創業間もなく社員の離職が相次ぎ、自社の経営難という苦い経験に直面する。以来、金融と人事の両面から中小企業を支援。企業型確定拠出年金の導入支援、職場の金融教育、チームビルディングを手がける。のべ面談 年間約500回。
2級FP技能士/DCプランナー/二種証券外務員。著書『社員が辞めない組織を作る3つの方法』