
制度が始まる月に、会社の側で何が起きるか。
変わるものと、変わらないものがあります。ここを取り違えると、従業員の方から「聞いていた話と違う」と言われます。
この記事で分かること
- 導入した月から変わるのは、給与明細・所得税・労働保険料。住民税は翌年6月から
- 社会保険料は、2等級以上下がれば4か月目から。1等級なら定時決定を待って9月から。掛金を拠出した月が起算になる
- 随時改定が使えるのは、導入した時だけ。導入後に掛金を増やしても、次の定時決定まで社会保険料は動かない
その月から変わるもの
| 何が | いつから |
|---|---|
| 給与明細 | 導入月から。掛金の欄が増え、額面が下がります |
| 所得税 | 導入月から |
| 労働保険料 | 導入月から(当年度の過払分の清算は翌年度) |
| 住民税 | 翌年6月から |
| 社会保険料 | 導入月には変わりません |
社会保険料だけ、その月には動かない
総務・三浦
掛金を出した月から、社会保険料も下がるものだと思っていました。
以西 裕介
下がりません。日本年金機構の仕組みでは、社会保険料は標準報酬月額という等級ごとに額が決まっていて、等級が変わらないあいだは同じ額が続きます。
等級が変わったとしても、反映されるのは先です。
| 等級の下がり方 | 仕組み | いつから |
|---|---|---|
| 2等級以上 | 随時改定 | 4か月目から。控除は通常5か月目の給与 |
| 1等級だけ | 定時決定 | 9月分から。控除は通常10月の給与 |
| 等級が変わらない | — | 変わりません |
3つめの行が抜けやすいところです。掛金を出しても、等級をまたがなければ社会保険料は1円も下がりません。
随時改定は3つ全てに当てはまった時だけ行われます。①昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。②変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額と、従前との間に2等級以上の差が生じた。③その3か月の報酬の支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)。
出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」。定時決定は4〜6月の報酬を7月に届け出て、9月から翌年8月まで適用されます(同「定時決定(算定基礎届)」)。
随時改定が使えるのは、導入した時だけ
総務・三浦
あとから掛金を増やした時も、同じように4か月目から下がりますか。
以西 裕介
下がりません。随時改定は固定的賃金が変わったことが条件なので、制度を入れた月だけが対象になります。
導入後に本人が掛金額を変えても、そこでは動きません。次の定時決定を待つことになります。
この扱いは運営管理機関の資料と、複数の社会保険労務士事務所の解説が一致しているものです。日本年金機構のページに直接の記載はない為、実際の判断は年金事務所に確認します。
下がった分の行き先
社会保険料が下がると、将来受け取る厚生年金も同じだけ下がります。
傷病手当金や出産手当金、失業給付も標準報酬月額をもとに計算されるので、등級が下がればそれらも下がります。
減った保険料の分は、本人の企業型確定拠出年金(企業型DC)の資産として残ります。受け取る先と、受け取る時期が変わるという話です。
ただし、この金額は運用の結果で変わります。受け取る額が、拠出した額を下回ることもあります。積み立てた資産は、原則60歳まで引き出せません。
説明会で、ここまで話します
社会保険料がいつから下がるかは、社員説明会で話します。「下がります」だけで終えません。
導入月の給与明細を見た時に、聞いていたとおりになっている。そこまでが説明の役目です。
社員説明会で何を話すかは「社員説明会で、制度の説明より先に話すこと」、一人ひとりと話す個人面談の組み方は「導入したのに掛金が眠る会社は、面談の組み方が違う」に書きました。
制度が始まった後、拠出が伸びるかどうかで会社の差が出ます。「導入して効果が出る会社と、出ない会社の違い」にまとめています。
よくある質問
導入月に、会社の事務はどれくらい増えますか。
給与計算の設定を1回変えます。掛金の欄を足して、控除の対象から外す作業です。
給与ソフトによって手順が違うので、導入の時に一緒に確認します。
全員の等級が下がりますか。
下がりません。標準報酬月額の等級は幅で区切られているので、掛金を出しても同じ等級に収まる方がいます。その場合、社会保険料は変わりません。
誰の等級が動くかは、掛金額を決める段階で試算できます。
給与明細の額面が下がることを、従業員はどう受け取りますか。
掛金の欄を明細に出して、下がった分がどこへ行ったかが見えるようにします。
給与明細の見せ方は、導入前に会社と決めておきます。
この記事は2026年9月10日時点の法令・制度にもとづいて書いています。制度は改正されることがあります。実際の手続きの前に、最新の内容をご確認ください。