導入準備制度設計

会社が月3,000円を出すと、全員が加入者になる

掛金を誰が出すかで、設計は3つに分かれます。私が会社拠出を入れる形を基本にしているのは、会社の負担が軽いからではありません。

企業型確定拠出年金(企業型DC)を入れるとき、掛金を誰が出すかで設計が3つに分かれます。

私は、会社が少しでも出す形を基本にしています。理由は会社の負担が軽いからではありません。

この記事で分かること

  1. 分かれ目は、全員が加入者になるかどうか。会社が1円でも出せば、従業員は全員が加入者になる
  2. 完全選択制だけだと、やっている人とやっていない人に分かれる。やっていない人にとっては、はじめから他人の制度になる
  3. 全員が加入者なら、同僚同士で運用の話ができる。「どんなファンドに拠出してる」「何パーセント増えた」が誰とでも通じる
目次
  1. 掛金を誰が出すかで、3つに分かれる
  2. 完全選択制だけだと、社内が二つに分かれる
  3. 全員が加入者だと、同じ話ができる
  4. 会社が出すのは、月3,000円から
  5. 入れたあとに、何をするか
  6. よくある質問

掛金を誰が出すかで、3つに分かれる

設計掛金を出す人加入者になるのは
A 会社拠出 会社 全員
B 完全選択制 従業員(給与の一部を回す) 希望した人だけ
A+B 会社が出し、従業員が上乗せできる 全員

右の列が、この記事で言いたいことのほとんどです。会社が1円でも出せば、その時点で従業員は全員が加入者になります。

完全選択制だけだと、社内が二つに分かれる

Bの完全選択制は、給与の受け取り方を従業員が選ぶ形です。掛金に回すかどうかは本人が決めます。会社の負担はありません。

ただし、始めてみると社内はこうなります。

あの社員さんはやっているけれど、この社員さんはやっていない。

やっていない人にとって、企業型DCは自分に関係のない話になります。説明会に出ても、面談に呼ばれても、はじめから他人の制度です。

福利厚生として見ると、ここが引っかかります。会社は全員のために費用と手間をかけて制度を入れています。それなのに、届く人と届かない人が分かれる。中小企業が大企業との差を埋めるために入れる制度で、社内に新しい差ができてしまいます。

全員が加入者だと、同じ話ができる

会社が拠出していれば、全員が加入者です。ここから、社内でこういう会話が生まれます。

社員どうし

「どんなファンドに拠出してるの」

「何パーセント増えた」

「どれくらい拠出してる」

同じ制度に全員が入っているので、誰とでもこの話ができます。誰とでも共通の話ができるというのは、とても大きな価値です。

制度の説明は年に何回もできませんが、こういう会話は毎日どこかで起きます。運用の話を年1回の面談だけで支えるより、はるかに強く効きます。

説明会も同じです。全員が加入者なら、話されているのは聞き手の口座のことです。「やるかどうか、あとで考える人」が半分いる部屋とは、空気が違います。

編集部・大谷

会社が出すとなると、毎月ずっと続く負担になります。3,000円でも全員分となると、社長は迷いませんか。

以西 裕介

迷われます。ただ、この3,000円を上乗せの費用にしない方法があります。月給30万3,000円のうち3,000円を掛金に回せば、会社が払う額は変わらないまま、全員が加入者になります。

編集部・大谷

上乗せをしない人が出てきたら、結局Bと同じことになりませんか。

以西 裕介

なりません。会社が出している時点で、その人はもう加入者です。自分の口座があって、自分の資産が動いています。上乗せするかどうかは、加入者の中の違いです。

完全選択制だけの場合は、そもそも口座を持っていない人がいます。この差は大きいです。

会社が出すのは、月3,000円から

会社が出す額は、月3,000円から設定できます。企業型DCで会社が出せるいちばん小さい額です。

役職で段階をつけることもできます。一般社員3,000円、管理職5,000円、役員10,000円といった形です。

そのうえで、従業員が自分の給与から上乗せできるようにします。これがA+Bです。会社は全員に同じ入口を用意し、そこから先はそれぞれが決める。この形を基本にしています。

上乗せの部分を残しておく理由は、勤めた年数で結果が大きく変わるからです。会社が出す月3,000円だけでも、40年勤めれば2,500万円になる計算です。ただし20年だと250万円。10分の1です。

新卒で入った人には40年がありますが、40歳で入った人には20年しかありません。会社が出す額は全員同じでも、必要な額は一人ひとり違う。上乗せができる形にしてあると、遅く入った人が自分で追いつけます。

計算の前提は「月給の差は3,000円。退職金の差は2,500万円」に書きました。

前提

掛金の上限や、従業員が上乗せできる額の範囲は、制度の種類と運営管理機関によって変わります。金額は運用の結果で増減し、元本を下回ることがあります。積み立てた資産は原則60歳まで引き出せません。

入れたあとに、何をするか

会話が生まれるかどうかは、最初に何を伝えたかで変わります。

社員説明会については「社員説明会を社長の言葉から始める理由」に、個人面談の組み方は「個人面談を就業時間の中に組む」に書きました。

費用の実数は「企業型DCの費用は結局いくらか」にまとめています。

よくある質問

会社が出す額は、全員同じでないといけませんか。

役職で段階をつけられます。一般社員3,000円、管理職5,000円、役員10,000円といった形です。

従業員が上乗せしなかった場合、どうなりますか。

会社が出した分だけが積み立てられます。加入者であることは変わりません。

会社が出した分は、辞めた社員が持って行きますか。

積み上がった資産は本人のものなので、辞めても本人が持って出ます。手続きは「会社を辞めたとき、企業型DCの資産はどうなるか」に書きました。

導入を考えている会社の方へ

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ファイナンシャルプランナー 以西裕介

この記事を書いた人

以西 裕介いさい ゆうすけ

株式会社ソケットクリエイティブ 代表取締役/一般社団法人確定拠出年金推進協会 理事。
26歳で独立起業。創業間もなく社員の離職が相次ぎ、自社の経営難という苦い経験に直面する。以来、金融と人事の両面から中小企業を支援。企業型確定拠出年金の導入支援、職場の金融教育、チームビルディングを手がける。のべ面談 年間約500回。
2級FP技能士/DCプランナー/二種証券外務員。著書『社員が辞めない組織を作る3つの方法』