企業型確定拠出年金(企業型DC)を入れるとき、掛金を誰が出すかで設計が3つに分かれます。
私は、会社が少しでも出す形を基本にしています。理由は会社の負担が軽いからではありません。
この記事で分かること
- 分かれ目は、全員が加入者になるかどうか。会社が1円でも出せば、従業員は全員が加入者になる
- 完全選択制だけだと、やっている人とやっていない人に分かれる。やっていない人にとっては、はじめから他人の制度になる
- 全員が加入者なら、同僚同士で運用の話ができる。「どんなファンドに拠出してる」「何パーセント増えた」が誰とでも通じる
掛金を誰が出すかで、3つに分かれる
| 設計 | 掛金を出す人 | 加入者になるのは |
|---|---|---|
| A 会社拠出 | 会社 | 全員 |
| B 完全選択制 | 従業員(給与の一部を回す) | 希望した人だけ |
| A+B | 会社が出し、従業員が上乗せできる | 全員 |
右の列が、この記事で言いたいことのほとんどです。会社が1円でも出せば、その時点で従業員は全員が加入者になります。
完全選択制だけだと、社内が二つに分かれる
Bの完全選択制は、給与の受け取り方を従業員が選ぶ形です。掛金に回すかどうかは本人が決めます。会社の負担はありません。
ただし、始めてみると社内はこうなります。
あの社員さんはやっているけれど、この社員さんはやっていない。
やっていない人にとって、企業型DCは自分に関係のない話になります。説明会に出ても、面談に呼ばれても、はじめから他人の制度です。
福利厚生として見ると、ここが引っかかります。会社は全員のために費用と手間をかけて制度を入れています。それなのに、届く人と届かない人が分かれる。中小企業が大企業との差を埋めるために入れる制度で、社内に新しい差ができてしまいます。
全員が加入者だと、同じ話ができる
会社が拠出していれば、全員が加入者です。ここから、社内でこういう会話が生まれます。
社員どうし
「どんなファンドに拠出してるの」
「何パーセント増えた」
「どれくらい拠出してる」
同じ制度に全員が入っているので、誰とでもこの話ができます。誰とでも共通の話ができるというのは、とても大きな価値です。
制度の説明は年に何回もできませんが、こういう会話は毎日どこかで起きます。運用の話を年1回の面談だけで支えるより、はるかに強く効きます。
説明会も同じです。全員が加入者なら、話されているのは聞き手の口座のことです。「やるかどうか、あとで考える人」が半分いる部屋とは、空気が違います。
編集部・大谷
会社が出すとなると、毎月ずっと続く負担になります。3,000円でも全員分となると、社長は迷いませんか。
以西 裕介
迷われます。ただ、この3,000円を上乗せの費用にしない方法があります。月給30万3,000円のうち3,000円を掛金に回せば、会社が払う額は変わらないまま、全員が加入者になります。
編集部・大谷
上乗せをしない人が出てきたら、結局Bと同じことになりませんか。
以西 裕介
なりません。会社が出している時点で、その人はもう加入者です。自分の口座があって、自分の資産が動いています。上乗せするかどうかは、加入者の中の違いです。
完全選択制だけの場合は、そもそも口座を持っていない人がいます。この差は大きいです。
会社が出すのは、月3,000円から
会社が出す額は、月3,000円から設定できます。企業型DCで会社が出せるいちばん小さい額です。
役職で段階をつけることもできます。一般社員3,000円、管理職5,000円、役員10,000円といった形です。
そのうえで、従業員が自分の給与から上乗せできるようにします。これがA+Bです。会社は全員に同じ入口を用意し、そこから先はそれぞれが決める。この形を基本にしています。
上乗せの部分を残しておく理由は、勤めた年数で結果が大きく変わるからです。会社が出す月3,000円だけでも、40年勤めれば2,500万円になる計算です。ただし20年だと250万円。10分の1です。
新卒で入った人には40年がありますが、40歳で入った人には20年しかありません。会社が出す額は全員同じでも、必要な額は一人ひとり違う。上乗せができる形にしてあると、遅く入った人が自分で追いつけます。
計算の前提は「月給の差は3,000円。退職金の差は2,500万円」に書きました。
掛金の上限や、従業員が上乗せできる額の範囲は、制度の種類と運営管理機関によって変わります。金額は運用の結果で増減し、元本を下回ることがあります。積み立てた資産は原則60歳まで引き出せません。
入れたあとに、何をするか
会話が生まれるかどうかは、最初に何を伝えたかで変わります。
社員説明会については「社員説明会を社長の言葉から始める理由」に、個人面談の組み方は「個人面談を就業時間の中に組む」に書きました。
費用の実数は「企業型DCの費用は結局いくらか」にまとめています。
よくある質問
会社が出す額は、全員同じでないといけませんか。
役職で段階をつけられます。一般社員3,000円、管理職5,000円、役員10,000円といった形です。
従業員が上乗せしなかった場合、どうなりますか。
会社が出した分だけが積み立てられます。加入者であることは変わりません。
会社が出した分は、辞めた社員が持って行きますか。
積み上がった資産は本人のものなので、辞めても本人が持って出ます。手続きは「会社を辞めたとき、企業型DCの資産はどうなるか」に書きました。