企業型確定拠出年金(企業型DC)を入れるべきかどうか。まず決めるのは、自社がそもそも対象になるかどうかです。
この記事は、そこだけを扱います。費用がいくらか、導入して何が起きるかは別に書いています。
この記事で分かること
- 導入できるのは厚生年金の適用事業所。法人か個人事業かは問われない
- 役員だけの会社も法律上は導入できる。労使合意書に従業員の署名を求めるプランがあるため、選ぶ先が変わる
- 赤字の会社にはおすすめしない。ただし現金資産や純資産が潤沢で、退職金を積みたい場合は別
1. 厚生年金を納めているか
企業型DCを導入できるのは、厚生年金の適用事業所です。ここが最初の線になります。
法人か個人事業かは問われません。業種の制限も、資本金の要件もありません。厚生年金を納めていれば対象です。
逆に、厚生年金を納めていない事業所は、ほかの条件をすべて満たしていても導入できません。ここだけは例外がないので、最初に確認してください。
実施に必要なのは3つです。
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厚生年金の適用事業所であること
毎月の社会保険料の納入通知書を見れば分かります。
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従業員の同意を得て、規約を作ること
厚生年金被保険者の過半数を代表する方の同意が要ります。労働組合があるときは組合の同意です。
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その規約について、厚生労働大臣の承認を受けること
書類の作成と届出は、こちらで代行します。
根拠:確定拠出年金法 第3条第1項
2. 従業員がいるか
次に、従業員がいるかどうかです。その従業員が厚生年金を納めているかどうかで、導入すべきかどうかが変わります。
企業型DCに加入できるのは厚生年金の被保険者で、従業員か役員かは問われません。人数の下限もなく、1名から導入できる制度です。
年齢の上限もご質問をいただきます。厚生年金の被保険者であれば70歳未満まで加入できます。従業員の年齢が高いから対象外、という線引きはありません。実際にどこまで加入できるかは、会社ごとの規約が定めます。
根拠:確定拠出年金法 第9条第1項/厚生年金保険法 第9条
判断が分かれるのは役員だけの会社です。法律上は導入できます。
ただし、労使合意書に従業員の署名を求めるプランがあります。あいおいニッセイ同和損保の「フォーシェ」がこれにあたり、従業員が一人もいない会社では書類が揃いません。
私たちは複数の運営管理機関を扱っているため、役員だけの会社でも入れる形をご案内できます。
ご夫婦2人だけの会社も同じです。おふたりがそれぞれ厚生年金の被保険者であれば、加入者が2名でも導入できます。どちらも役員の場合は、上と同じくプランの選定が要ります。
総務・三浦
うちは役員だけで、従業員が一人もいません。それでも入れられますか。
以西 裕介
法律のうえでは入れられます。引っかかるのは書類のほうで、労使合意書に従業員の署名を求めるプランがあります。そこでは書類が揃いません。
運営管理機関を選べば入れられるので、どこで入れるかを含めてご案内します。
3. 黒字か
3つめは、会社の状態です。
企業型DCは、基本的に福利厚生として導入する仕組みです。導入時の手数料に加えて、運営費が毎年かかり続けます。赤字の会社にはおすすめしていません。
掛金は会社の判断で止められますが、運営費のほうは制度を続けるかぎり出ていきます。ここを軽く見て入れると、あとで苦しくなります。
ただし例外があります。現金資産や純資産が潤沢にあり、退職金を積んでいきたいという会社です。この場合は、赤字でも導入する判断になります。
損益と手元資金は別の話です。決算書の当期利益だけを見て決めないでください。
編集部・大谷
赤字だと入れられない、ということでしょうか。
以西 裕介
制度としては入れられます。おすすめしていないだけです。
掛金は会社の判断で止められますが、運営費は制度を続けるかぎり出ていきます。そこを軽く見て入れると、あとで苦しくなります。手元の資金が厚くて、退職金を積んでいきたい会社であれば、赤字でも入れる判断になります。
実際にいくらかかるかは「企業型DCの費用は結局いくらか」に書きました。
4. 退職金制度として入れたいのか
4つめは目的です。いま退職金制度がなく、これから作りたいと考えているかどうか。
退職金制度として使えるものは、企業型DCだけではありません。
| 使えるもの | お金の増え方 |
|---|---|
| 中小企業退職金共済(中退共) | 予定運用利回りが決まっている(1.0%) |
| 企業型確定拠出年金(企業型DC) | 加入者本人が選んだ商品で運用する |
| 確定給付企業年金(DB) | 会社が給付額を約束する |
| 保険 | 商品ごとに決まっている |
中退共の予定運用利回りは中小企業退職金共済事業本部の公表値(2026年8月時点)。
大きく違うのは、金額が決まっているか、運用の結果で変わるかです。中退共とDBが前者、企業型DCが後者です。
運用の結果で変わる、というのが具体的にどういうことか。ひとつ数字を置いておきます。
MSCIコクサイ・インデックス(配当込み・円ベース)の過去30年の年率リターンは11%でした。この利回りなら、毎月およそ1万円を30年で3,000万円という計算になります。
出典はmyINDEX(2026年7月末時点)。毎月10,700円を30年、月複利で計算し、手数料と税は考慮していません。過去の実績にもとづく計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。この11%のうち年1.27%は円安による押し上げです。
4つにはそれぞれメリットとデメリットがあります。その中でベストなものを入れるか、組み合わせる形をおすすめしています。企業型DCありきで考える話ではありません。
すでに中退共がある会社の場合は、新しく作るのではなく入れ替えや併用の設計になります。そこは個別に見ないと答えが出ません。
4つを通ったあと
ここまでで決まるのは、自社が対象かどうかまでです。実際に入れるかどうかは、費用と、導入したあとに何が起きるかを見てから決めてください。
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費用を見る
初期・月額・年額を「企業型DCの費用は結局いくらか」に出しています。
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導入したあとを見る
分かれ目は4か所あります。「導入して効果が出る会社と、出ない会社の違い」をご覧ください。
顧問の税理士や社労士への説明も、こちらからご案内できます。会社側で調整していただく必要はありません。
よくある質問
従業員が1名でも導入できますか。
できます。人数の下限はありません。加入できるのは厚生年金の被保険者で、従業員か役員かは問われません。
何歳まで加入できますか。
厚生年金の被保険者であれば70歳未満までです。実際にどこまで加入できるかは、会社ごとの規約が定めます。
すでに中退共があります。企業型DCも入れられますか。
入れられます。新しく作るのではなく、入れ替えか併用の設計になります。どちらがよいかは個別に見ないと答えが出ません。