企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っている会社を辞めるとき、積み立てた資産がどうなるのか。ここを知らないまま退職する方が多くいます。
結論から書くと、資産は本人のものとして持って出られます。ただし、手続きをしないまま6か月が過ぎると別の扱いになります。
この記事で分かること
- 資産は本人のもの。会社を辞めても残る。会社に縛りつけるための制度ではない
- 転職先に企業型DCがあれば、そこへ移す。無ければiDeCoへ移す。
- 何もしないまま6か月が過ぎると、自動移換される。2026年4月から、会社は資格を失う見込みの時点で説明することになった
資産は本人のもの
企業型DCの資産は、会社の口座ではなく、加入者本人の口座に積み上がります。会社を辞めても、その資産が消えることはありません。
制度としてそうなっているので、企業型DCは会社に人を縛りつける仕組みにはなりません。私たちが説明会で「持って出られます」と説明すると、意外そうな顔をされることがあります。
編集部・大谷
意外そうな顔をされるというのは、退職金は会社にあるもの、という受け取り方が多いということでしょうか。
以西 裕介
そう受け取られている場面には出会います。企業型DCは本人の口座に積み上がるので、辞めても残ります。
導入を検討している社長にも、ここは先にお伝えしています。
ある会社の社長は、社員説明会でこう話しました。65歳を迎えたときに、3,000万円という具体的な数字のお金を持って全員が出られるような会社にしたい、と。制度の性質を、そのまま自分の言葉にした言い方でした。
辞めたあと、行き先は3つ
退職後にどうするかは、次の職場に企業型DCがあるかどうかで決まります。
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転職先に企業型DCがある
転職先の企業型DCへ移します。それまで積み立てた資産を持ち込んで、そのまま続ける形です。
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転職先に企業型DCがない
個人型のiDeCoへ移します。自分で金融機関を選び、口座を開いて移換の手続きをします。
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自営業になる・働き方が変わる
この場合もiDeCoへ移します。掛金の上限は立場によって変わるため、そこは移す前に確認します。
どの道でも、共通しているのは自分で手続きをする必要があるという点です。会社が代わりにやってくれるものではありません。
6か月放置すると、自動移換される
ここが一番の落とし穴です。
退職して6か月のあいだ何もしないと、資産は自動的に国民年金基金連合会へ移されます。これを自動移換と呼びます。
自動移換された状態では、資産は運用されません。現金のまま置かれます。年金として受け取れる時期の計算にも影響します。気づかないまま何年も置かれている人がいます。
2026年4月から、会社は資格を失う見込みの時点で、加入者へ説明することになりました。それまでは資格を失ったあとの説明だったため、退職してから知る形になっていました。
説明を受ける時期が前倒しになっても、手続きをするのは本人です。退職が決まったら、移換先を決めるところまでを退職手続きの一部として考えてください。
会社側から見た「辞めるとき」
ここからは、制度を入れている会社の話です。
従業員が辞めるとき、会社がやることは多くありません。資格喪失の手続きと、本人への説明です。資産の行き先を決めるのは本人なので、会社が肩代わりすることはできません。
総務・三浦
辞める人に、どこまで説明すればいいでしょうか。手続きを代わりにやってあげたほうが親切に思えます。
以西 裕介
代わりにはできません。行き先を決めるのは本人です。
会社から伝えていただきたいのは、6か月放置すると自動移換されるという一点です。ここが伝われば、あとは本人が動けます。
そして、制度そのものをやめる場合には、従業員の同意が必要です。積み立てた資産は本人のものとして、iDeCoなどへ移ります。会社の判断だけで畳める制度ではありません。
導入を検討している段階で、この点を先に知っておいてください。判断材料は「うちの会社は企業型DCを導入すべきか — 4つの判断材料」にまとめました。
よくある質問
60歳より前に、現金で引き出せますか。
原則として引き出せません。老後のための制度なので、受け取れるのは60歳以降です。ごく限られた条件で脱退一時金が認められる場合はありますが、要件が厳しく、多くの方は当てはまりません。
移換の手続きは自分でできますか。
できます。転職先の担当部署か、iDeCoの口座を開く金融機関に問い合わせる形になります。導入支援をした会社の従業員の方からは、退職後でも直接ご質問をいただいています。
すでに自動移換されているようです。どうすればいいですか。
あとからでも、転職先の企業型DCかiDeCoへ移せます。移すまでのあいだ運用されない状態が続くので、気づいた時点で動いてください。