導入前内部留保

退職金3,000万円を内部留保で作ると、利益が4,400万円要る

退職金を用意する道は2つあります。税を通るか通らないかで、会社が出す額が10倍ちがいます。

タブレットのグラフを、ペンで指しているところ

従業員に3,000万円の退職金を用意する。そう決めた時、道は2つあります。

会社の利益を積み上げていくか、企業型確定拠出年金(企業型DC)のような制度を通すか。同じ3,000万円を用意するのに、会社が出す額が10倍違います。

この記事で分かること

  1. 内部留保は税を払ったあとのお金。3,000万円を残すには約4,400万円の利益が要る。実効税率を約32%として計算。差額の1,400万円は税で、退職金の原資にならない
  2. 企業型DCの掛金は全額損金。しかも運用に回る。30年なら月12,000円・総額432万円で3,000万円になる計算
  3. 内部留保には使い道の自由がある。設備・採用・赤字の年。企業型DCに出した掛金は会社の判断で引き出せない
目次
  1. 内部留保は、税を払った後のお金
  2. 企業型DCは、税を通らずに積める
  3. 並べるとこうなります
  4. 内部留保にしかできないこと
  5. 両方やっている会社が多い
  6. よくある質問

内部留保は、税を払った後のお金

利益を貯めて退職金にあてる場合、必要なのは3,000万円ではありません。

法人税を払った後に3,000万円が残っている必要があります。実効税率を約32%とすると、税引前で約4,400万円の利益が要ります。

3,000万円 ÷(1 − 0.32)= 4,412万円。実効税率は法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税を合わせたもので、会社の規模・所得・所在地で変わります。ここでは中小法人の目安として32%で計算しました。

差額の1,400万円は税です。退職金の原資にはなりません。

企業型DCは、税を通らずに積める

会社が出す掛金は全額が損金になります。利益から先に引かれるので、法人税がかかりません。

その上、拠出したお金は運用に回ります。会社が出した額より、受け取る額の方が大きくなります。

編集部・大谷

会社が出す額は、いくらになりますか。

以西 裕介

30年かけるなら、従業員1名あたり月12,000円です。総額で432万円になります。

同じ3,000万円を内部留保で作るには4,400万円の利益が要るので、10倍違うことになります。

並べるとこうなります

3,000万円を作るのに内部留保企業型DC
20年かける 4,400万円の利益 月37,000円 総額888万円
30年かける 4,400万円の利益 月12,000円 総額432万円
20年で5倍、30年で10倍

内部留保の側は、年数が延びても4,400万円のままです。置いてあるだけで増えないからです。企業型DCは長くかけるほど少ない額で済みます。

ただし、この金額は運用の結果で変わります。受け取る額が、拠出した額を下回ることもあります。積み立てた資産は、原則60歳まで引き出せません。

年率11%は、MSCIコクサイ・インデックス(配当込み・円ベース)の過去30年の実績です(出典:myINDEX・2026年7月末時点)。手数料と税は考慮していません。過去の実績にもとづく計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。ここに書いた金額は、そのときの口座に出る額です。物価が年2.5%上がるとすると、実質の利回りは年8.5%になります。また11%のうち年1.27%は円安による押し上げで(ドル円 1996年→2026年・IMF)、それも除くと年7.2%です。

内部留保にしかできないこと

ここまでを読むと制度を通したほうがよく見えますが、内部留保には内部留保の役目があります。

使い道が自由です。設備を買う、人を採る、赤字の年を越す。退職金だけの為に貯めるお金ではありません。

企業型DCに出した掛金は、従業員の資産になります。退職金として渡す為のお金です。会社の判断で引き出す性質のものではなく、本人も原則60歳から受け取ります。

勤続3年未満で自己都合退職した場合に会社へ返す定めを置くことはできますが、それ以外は戻りません。「中退共は11か月で辞めると0円になる」に、中退共との違いとあわせて書きました。

両方やっている会社が多い

実際には、どちらか一方を選ぶ話になりません。

退職金として渡す部分は制度を通し、事業に使う部分は内部留保で持つ。分けて考えると、両方の役目が立ちます。

自社にいくら出せるかは「企業型DCの費用は結局いくらか」、掛金の決め方は「掛金を誰が出すかで、社員どうしの会話が変わる」に書きました。

よくある質問

内部留保から退職金を払うときも、損金になりますか。

払った年に損金になります。ただしその年に大きな支出が立つので、利益の出ていない年に重なると資金繰りに響きます。

企業型DCは毎月少しずつ損金にしていくので、支出が平らになります。

月12,000円を全員に出すと、会社の負担が大きくないですか。

従業員10名なら月12万円、年144万円です。この額を毎年出し続ける前提の数字になります。

会社が出す額を小さくして、従業員が自分で上乗せする設計もあります。会社は月3,000円から始められます。

3,000万円という金額に根拠はありますか。

説明会で社長が話された金額です。65歳を迎えた時に3,000万円を持って全員が出られる会社にしたい、という言葉から来ています。

その日のことは「社員説明会で、制度の説明より先に話すこと」に書きました。

この記事は2026年9月10日時点の法令・制度にもとづいて書いています。制度は改正されることがあります。実際の手続きの前に、最新の内容をご確認ください。

導入を考えている会社の方へ

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ファイナンシャルプランナー 以西裕介

この記事を書いた人

以西 裕介いさい ゆうすけ

株式会社ソケットクリエイティブ 代表取締役/一般社団法人確定拠出年金推進協会 理事。
26歳で独立起業。創業間もなく社員の離職が相次ぎ、自社の経営難という苦い経験に直面する。以来、金融と人事の両面から中小企業を支援。企業型確定拠出年金の導入支援、職場の金融教育、チームビルディングを手がける。のべ面談 年間約500回。
2級FP技能士/DCプランナー/二種証券外務員。著書『社員が辞めない組織を作る3つの方法』