
このブログに出てくる退職金の金額は、全て年率11%で計算しています。40年で2,200万円、30年で751万円。どれもこの利回りが前提です。
その11%がどこから来た数字で、どこまで信じてよいのかを書きます。
この記事で分かること
- 11%はMSCIコクサイ(配当込み・円ベース)の過去30年の実績。出典はmyINDEX・2026年7月末時点。作った数字ではないが、将来を約束するものでもない
- そのうち年1.27%は円安の押し上げ。除くと7.2%。ドル円 1996年→2026年の変化から算出(IMF)
- 物価を年2.5%引くと、実質は年8.5%。月3,000円を40年で、口座に出るのは2,198万円。いまのお金に直すと818万円
MSCIコクサイの、過去30年の実績
使っているのはMSCIコクサイ・インデックス(配当込み・円ベース)の過去30年の年率リターンです。日本を除く先進国の株式に広く投資した時の成績を指します。
出典:myINDEX(2026年7月末時点)
作り話の数字ではありません。過去30年、実際にそうなったという記録です。
ただ、そのまま将来に当てはめてよいかというと、そうではありません。理由が2つあります。
1つめ。円安が1.27%押し上げている
「円ベース」というのが引っかかりどころです。海外の株を持っていると、株価が上がらなくても、円が安くなるだけで円に直した金額は増えます。
過去30年のドル円の動きを見ると、年1.27%ぶんが為替の押し上げでした。
ドル円 1996年→2026年の変化から算出(出典:IMF)
11%から1.27%を引くと、7.2%です。この先ずっと円安が続くとは限らないので、為替を抜いた数字も見ておく必要があります。
2つめ。物価が上がると、同じ金額でも買えるものが減る
編集部・大谷
運用の方は分かりました。ほかに引いておくものはありますか。
以西 裕介
物価です。40年後の2,200万円は、いまの2,200万円と同じではありません。
物価が年2.5%ずつ上がるとすると、実質の利回りは年8.5%になります。11%から2.5%を引いた数字です。
編集部・大谷
では、記事に書くべき数字は8.5%のほうでしょうか。
以西 裕介
どちらも要ります。実際は11%で回っているので、口座を開いた時に見えるのは11%の金額です。その上で、それがいまのお金でいくらぶんかを知っておいていただく。
見た目の金額と、いまのお金
会社が月3,000円を出した場合で並べます。左が口座に出る金額、右がそれを「いまのお金」に直したものです。
| 勤続年数 | 会社が出した額 | 口座に出る金額 | いまのお金に直すと |
|---|---|---|---|
| 20年 | 72万円 | 242万円 | 148万円 |
| 30年 | 108万円 | 751万円 | 358万円 |
| 40年 | 144万円 | 2,198万円 | 818万円 |
40年で2,198万円と818万円。同じお金を、2つの見方で書いただけです。
それでも、会社が出した144万円に対して818万円です。物価を引いた後でも5.7倍になっています。
ただし、この金額は運用の結果で変わります。受け取る額が、拠出した額を下回ることもあります。積み立てた資産は、原則60歳まで引き出せません。
年率11%は、MSCIコクサイ・インデックス(配当込み・円ベース)の過去30年の実績です(出典:myINDEX・2026年7月末時点)。手数料と税は考慮していません。過去の実績にもとづく計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。ここに書いた金額は、そのときの口座に出る額です。物価が年2.5%上がるとすると、実質の利回りは年8.5%になります。また11%のうち年1.27%は円安による押し上げで(ドル円 1996年→2026年・IMF)、それも除くと年7.2%です。
なぜ11%を書くか
実質の8.5%だけを書くほうが、慎重に見えるかもしれません。それでも本文には11%の金額を置いています。
理由は従業員の方が実際に見る画面がそれだからです。加入者専用サイトにログインすると、その時の残高が出ます。そこに「物価を引いた実質」は表示されません。
説明会で1,000万円と言っておいて、10年後にログインした画面が違う数字だと、そこで信用が切れます。見える数字と、話す数字を揃えておく。その上で、物価の話も同じ場所に書いておく。この形にしています。
社員説明会で何を話すかは「社員説明会で、制度の説明より先に話すこと」に、拠出額の決め方は「掛金を誰が出すかで、社員どうしの会話が変わる」に書きました。
よくある質問
11%というのは高すぎませんか。
過去30年の実績です。将来を約束する数字ではありません。
低めに見ておきたい場合は、円安の押し上げ1.27%と物価2.5%を引いた年7%前後で計算してください。40年で約900万円になります。
途中で相場が下がったらどうなりますか。
減ります。受け取る額が拠出した額を下回ることもあります。ただし積立は毎月続くので、下がっている間に買った分は、戻った時に効いてきます。
60歳まで引き出せない仕組みが、ここでは有利に働きます。下がった局面で売らずに済む為です。
元本確保型を選んだ場合はどうなりますか。
定期預金などを選ぶと、この計算は当てはまりません。ほとんど増えないまま40年が過ぎます。
何も選ばないと未指図資産のまま置かれ、一定期間が過ぎると自動的に元本確保型が買われる制度もあります。「導入して効果が出る会社と、出ない会社の違い」に書きました。
この記事は2026年9月10日時点の法令・制度にもとづいて書いています。制度は改正されることがあります。実際の手続きの前に、最新の内容をご確認ください。